世界のeスポーツビジネスモデルを調査した件

はじめに

 2019年現在、eスポーツの市場は日本でも急速に拡大している。2017年から2018年にかけて、市場規模は13倍、48.3億円の市場になった。日常に「eスポーツ」という単語を耳にする機会も増え、テレビ番組でもしばし特集されている。しかし、eスポーツとビジネスとして関わろうとしたとき、どのような関わり方をすれば良いのか分からない人も多いのではないだろうか。今回はそのような方々に向け、世界のeスポーツビジネスモデルをご紹介したい。少しでも参考になれば幸いである。

 また、当社はあらゆるアライアンスを受け付けているので、「関わりたい!」と思った人はメールして頂ければ幸いだ。

eスポーツチームの収入源は何か

スポンサー収入

 諸外国のeスポーツチームの収益において、70%以上を占めると言われているのがスポンサーシップ及び広告費用だ。しかし、現状では単年度の契約が多く、継続的なスポンサー契約を獲得できていないケースも多い。スポーツのように有名な数種類の競技(野球やサッカー、ラグビーなど)に人気が集中するわけではなく、eスポーツ競技には多種多様なものがあるのも理由の1つ。2018年はDota2が賞金総額約190億円超えということで話題になったが、これがいつまで継続するかは誰にも分からない。とはいえ、eスポーツチームは基本的にスポンサー企業の広告をユニフォームに背負って大会に出場し、収益を得ている。スポンサー企業はIT関連が多い。

放送権での収入

 テレビでのeSportsの放送は世界的にもまだ歴史が浅い。基本的には設立されたリーグ単位で、テレビ局各社と放送の権利を売買することになる。世界ではネット配信が先立って行われているケースがほとんど。テレビ放映の契約をしたらネット配信はやめる、というケースはほぼなく、契約は共存する形になっている。これらの契約はゲームメーカーかリーグ創立者がテレビ局と行うものであるため、eスポーツ市場のお金ではあれ、eスポーツチームの収益にはあまり影響しない。

物販

 eスポーツ関連商品に対する消費者支出は世界的に見てもあまり高くないが、eスポーツチームはゲーム機器やその関連商品、もしくはチームグッズなどをインターネット販売しているケースが多い。

大会賞金

 市場全体としてはこの項目の影響力が非常に強い。大会「The International 2018」では2,480万ドルの賞金が用意されたが、約94%がクラウドファンディングで集められた。このことは、スポーツとは異なるeスポーツ独自の文化である。eスポーツ市場のファンはスポーツ市場のファンとは異なる行動様式、消費動機を持っていると考えられる。しかし、eスポーツチームの収入源としては、大会賞金よりもスポンサー収益の方が割合が高い。もちろん大きな大会で入賞したチームは別だが、そのようなチームはeスポーツチーム全体から見れば微々たるもので、基本的にeスポーツチーム運営はスポンサー収益で成り立っている。

命名権

 広義で捉えればスポンサーシップの一部かもしれない。最近日本では、京都においてeスポーツ専用施設が誕生したが、世界では自分のトレーニング拠点を持つeスポーツチームが増加している。そうした施設命名権を販売することもeスポーツチームにとって大きな収入源となっている。

Twitchの購読料(多様なサービスの投げ銭含む)

 eスポーツプレイヤーはインターネット配信を行なっているケースが非常に多いです。中でも有名な「Twitch」では月額50万ドル以上を稼ぐツワモノ(Ninja)もいます。

eスポーツに関わる産業

ゲームメーカー

 KONAMIやCAPCONなどがこれにあたる。説明するまでもなく、ゲームを作っている会社。ここが許可を出さないと、大会等の開催すらできない。CAPCONのように、特別にゲームをイベントに使いたい人向けの窓口を用意している会社もあれば、そうでない会社もある。

 当社でイベントをした際は、内輪向けで一般向けの告知をしないものであれば私的利用の範囲内とのご判断を頂いたことが多かった。一般向けの告知でキャラクターを使う場合、無償で使えるケースは未体験。ここらへん、日本では、まだ各社探り探り値段を決めているという感じがする。

eスポーツ関連機器のメーカー

 いま、市場が大きいのは「ゲーミングチェア」「ゲーミングPC」「スマホに接続して使用するゲーム用コントローラー」の3つだろう。それぞれについて説明する。

ゲーミングチェア

 eスポーツプレイヤーの多くが悩みとして抱えるのが「腰痛」である。長時間プレーするあまり、腰を痛めてしまうのだ。テニスプレイヤーのテニス肘みたいなもので、eスポーツプレイヤーの多くはこの悩みを持つ。そこで、長時間のeスポーツプレイ用に人体工学を活用して開発されたのが「ゲーミングチェア」だ。

 値段はそこそこするが、オフィスチェアとしても使用できる。何とうちの会社でも利用中である。本当に負担が軽減されるのでお試しあれ。Amazonとかで調べて貰えばわかるが、大変多くの商品が出品されている。

ゲーミングPC

 世界で一番人口の多いeスポーツ「League of Legends(通称lol)」はあまり高いスペックのPCを必要としないが、グラフィックの質が高まった結果、高スペックPCの方がプレイしやすいeスポーツも増えている。また、高解像度のディスプレイや目が疲れにくいディスプレイ、感度の高いマウスも必要になってきている。

 特にCPUやグラフィックボードの性能が強化されている。もちろんこれで仕事もできる。

スマホに接続して使用するゲーム用コントローラー

 PUBGや荒野行動、フォートナイト等のFPS(一人称視点のシューティングゲーム、主に銃器を用いて戦闘を行うゲーム)が流行るにつれ、スマートフォンアプリ化されているeスポーツタイトルも増えてきた。そのような一瞬の判断やボタン入力が必要なタイトルでは、コントローラーが大活躍する。スマートフォンに繋げば、タップより確実なキャラクター操作ができるわけだ。

建設会社

 「えっ、建設業?」と疑問に思われるかもしれない。しかし、世界ではeスポーツ専用の訓練施設やスタジアムも存在する。

韓国にあるNEXON Arena
SEOULISTICSより引用 

 通常のスポーツでもそれぞれの競技に最適化された施設がある。それはeスポーツも同様だ。配線やそれぞれのデバイスの見せ方、通常の施設を作るのとは異なる。もちろんイベント設営会社が一般的な会場(東京ビックサイト等)をイベント内容に合わせてサイバーな空間に仕上げることもあるが、世界では上の写真のような施設がどんどん出来ている。日本でもチーム専用のトレーニングスペースからスタジアムまで、今後建造が相次ぐのは疑いようがない。

マネジメント会社及び芸能事務所

 説明不要かもしれないが、Youtuberを専門とするマネジメント会社ができたのと同じ流れで、eスポーツ選手やチームをマネジメントする会社が存在している。個人がチーム専属の交渉人を務めるケースもあり、これはサッカーやバスケットボールにおける動きと同様である。また、eスポーツの解説者やアイドルも存在している。

イベント設営会社

 専用施設を持たない会社がeスポーツ関連のイベントを開催する場合、通常イベント設営会社に頼むことになる。これまでの一般的なイベント設営よりも、モニターの台数が多くなり、配線が大事になる。また、安定的なネットワーク環境も整えなければならない。eスポーツイベントを専門にする会社も増えていくことだろう。

スクール

 日本でも最近話題になった「eスポーツを学ぶためのスクール」である。日本だと東京アニメ・声優専門学校が経営するプロゲーマー養成スクールが有名。テニススクールや野球教室の多さを考えれば、今後最も発展するeスポーツとの関わり方の1つと言えるかもしれない。

中小企業におけるeスポーツ産業との関わり方

広告主として関わる

 当然「スポンサーになる」という関わり方がある。エンドユーザー向けの商材を持っている企業の方が有利と思われがちだが、JリーグではB2Bを主とするような企業もスポンサーになっており、「地域の顔」としての担いを果たしている。eスポーツはまだまだリーグも整備されきっておらず、今後様々な地域に多様なチームが生まれる。地場に立脚した中小企業こそ、スポンサーに適格であると言えるだろう。

交流会の手法として採用する

 実はこれ、私自身開催したことがあるのだが(写真は4/22に開催したもの)、意外と盛り上がる。経営者同士でテニスをやったり野球をやったりすることもあるが、どうしても運動の得意不得意があるし、何より中年の多くは運動不足。また男女一緒に運動するのもなかなか難しい。そんな中、eスポーツは交流イベントにめちゃくちゃ使える。経営者だけでなく、気軽なパーティとしても利用可能だろう。

社員の福利厚生として使用する

 eスポーツはボケ防止等、脳の活性化にも役立つとされる。健康麻雀のように、eスポーツを通じて生涯健康に、といったNPOが増えるのも当然予見される。また、eスポーツでは、とりわけ「ゲーミフィケーション」という分野も発展しており、障害を持つ人々にも貢献している。誰でも気軽に公平に参画できるeスポーツ。貴社でも「eスポーツ部」を作ってはいかがだろうか。

About the Author

澤田純平

1988年1月30日生まれ、東京理科大学中退。株式会社SYN(この会社)の代表取締役社長。東京青年会議所(東京JC)所属。新しい企画や未知の事業を体験することが趣味。とりあえずやってみる。